【ソフトウェアテスト】ソフトウェアテスト関連で耳にするJSTQBとは何か
JSTQBやJSTQB関連資格について、QAやテストといった役割で業務にあたる方のみならず、ソフトウェア開発現場に就業されている各役割の方々(開発エンジニアやPL/PMの方等)にとっても業務に活用できる部分があると思うので、そもそもJSTQBとは何なのかというところを記載していきます。
1. ISTQB(International Software Testing Qualifications Board)
JSTQBの説明の前に一旦ISTQBについて記載します。
ISTQB(International Software Testing Qualifications Board)は国際ソフトウェアテスト資格委員会で、1998年にベルギーのブリュッセルにて設立されたソフトウェアテスト技術者の国際的な資格認定団体です。
世界中のソフトウェアテスト専門家によって構成されている団体であり、ソフトウェアテスト技術者の知識及び技能の向上、ソフトウェアテスト技術者の資格認定、ソフトウェアテスト技術に関する情報発信を目的として、資格認定試験の開発・実施、セミナー・講演会の開催や情報発信などの活動を実施しています。
2. JSTQB(Japan Software Testing Qualifications Board)
漠然と「デバッグ関連の何か」や「テストの資格の何か」といった印象をお持ちの方もいるかも知れませんが、JSTQBという言葉自体の説明としては、ISTQBの加盟組織であり日本でのソフトウェアテスト技術者資格認定を実施管理する運営組織として2005年4月にISTQBより認定された組織の名称です。
組織の概要や運営委員などの各種情報は以下の公式サイトで確認できます。
▼JSTQB公式サイト
https://jstqb.jp/index.html
3. JSTQB認定テスト技術者資格について
前述のとおりJSTQB認定テスト技術者資格はJSTQBが認定する資格のため、IT関連資格の中でもITパスポートや基本情報技術者資格のような国家資格ではなく、民間資格に分類されます。
しかし、国家資格ではないからといって難易度が低かったり資格としての信頼性が低いとはいえません。
・難易度と知識の取得
難易度ごとにレベルが分かれており、かつ各専門分野の内容で細分化されているので、業務領域・専門領域に即した資格を取得することで各テスト業務遂行に必要な知識を取得できます。
・信頼性
日本の国家基準による認定資格ではありませんが、国際的な組織基準に基づいて制定された認定資格なので、制定の経緯や内容の信頼性が不明な資格ではありません。
4. JSTQB認定テスト技術者資格の種類
本記事記載の2024年3月時点でのJSTQB認定テスト技術者資格の種類は、以下のとおりです。
・Foundation Level(FL)
ソフトウェアテストの基礎知識を習得したい方向け。
テストの基礎知識、テスト計画、テスト設計、テスト実行、テスト結果分析など
・Advanced Level(AL)
1.Test Manager (TM)
テストマネジメントの知識と経験を習得したい方向け。
テスト計画、テスト管理、テストチームのリーダーシップなど
2.Test Analyst (TA)
テスト分析の知識と経験を習得したい方向け。
テスト要件定義、テスト仕様書作成、テストケース設計など
3.Technical Test Analyst (TTA)
テスト設計・実装の知識と経験を習得したい方向け。
テストデータ設計、テスト自動化、テスト環境構築など
4.Test Architect (TA)
テストアーキテクチャの知識と経験を習得したい方向け。
テストアーキテクチャ設計、テストインフラストラクチャ構築など
5.Test Security Specialist (TSS)
テストセキュリティの知識と経験を習得したい方向け。
脆弱性分析、ペネトレーションテスト、セキュリティテストなど
6.Test Performance Specialist (TPS)
テストパフォーマンスの知識と経験を習得したい方向け。
パフォーマンス分析、負荷テスト、スケーラビリティテストなど
7.Test Automation Specialist (TAS)
テスト自動化の知識と経験を習得したい方向け。
テスト自動化ツール、テストフレームワーク、テスト自動化設計など
8.Usability Test Specialist (UTS)
ユーザビリティテストの知識と経験を習得したい方。
ユーザビリティテスト計画、テスト実施、結果分析など
※補足
時期により試験区分や試験内容等が改定・変更となる場合があるので、資格取得に臨む場合は最新の情報を公式サイトでご確認ください。
5. 試験内容について
JSTQBの公式サイト内に掲載されていますが、FL/ALともにシラバス(学習事項)を元にして出題されます。
各レベルのシラバスは以下記載URLのページからPDF形式で閲覧可能なので、資格取得を考慮している方や、どのような内容で試験が実施されているのかを見てみたい方は、ダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
また、サンプル問題や用語集のリンクなども掲載されているので、ナレッジの補足として併せてご覧ください。
▼シラバス(学習事項)・用語集
https://jstqb.jp/syllabus.html
6. Foundation Level(FL)取得時の印象
私はソフトウェアテスト業務に従事して業務経験をある程度積んだところからFoundation Level(FL)の学習を進めて資格を取得しましたが、取得に際しての印象としては、テストの基本的なマインドセットや技法から、各種レビュー形式・マネジメントや分析・テスト自動化などの幅広い領域の学習を必要としたため、実務にあたる際の担当領域やプロジェクトの形態などにもよる部分はあると思いますが、資格取得の勉強に伴って実務のみでは身につかなかったり関わりがなかったような部分を補って知識を得ることができた実感があります。
また、マインドセットについても得るところが大きく、テスト実施者は「チェックして報告する」ことを目的とする思考に陥りがちですが、「プロジェクトと製品の品質向上に貢献する」ことを目的としてテストに向かうことができるようになるため、テスト業務の立場からプロジェクト自体の高品質化・効率化にも寄与するようなテスト活動を意識できるようになると思います。
7. まとめ
JSTQB認定テスト技術者資格は、もちろんソフトウェアテスト業務を担当する方にとって必要な知識や技法を取得するための手段として有効ですが、コードを実装するエンジニアの方は、テスト担当と開発担当の各マインドセットやテストの手法・手順・スコープなどを知ることでホワイトボックステストやコードレビュー実施の際に別の観点を持つことができたり、プロジェクトの進行管理やチームマネジメントを担当する方は、テスト活動が及ぼすチーム全体への影響や、品質と開発進捗の関わり方などをより明確に把握できるようになるため、テスト担当者のみならず、ソフトウェア開発関連業務に従事される方全般にとって有効な資格だと思います。
テスト実施者の能力と品質の向上、プロジェクト全体の高品質化のため、ソフトウェア開発関連業界の方はチーム内メンバーへJSTQB認定テスト技術者資格の取得を勧めてみてはいかがでしょうか。