ネットワークの基礎⑤
TCP/IPネットワークでよく使われるデータリンクであるイーサネット、無線LAN、PPPなどについて学習していきます。
1. データリンクの役割
機器間で通信するための方法はいくつかあり、ノード間で同一の方法で繋げたひとかたまりデータリンクといいます。
具体的な通信手段としては、イーサネット、無線LAN、PPPなどがあります。
通信媒体には、ツイストペアケーブル、同軸ケーブル、光ファイバー、電波、赤外線などがあります。
また、機器と機器の間をスイッチやブリッジ、リピーターなどが中継することもあります。
ここで通信に必要になってくるのが、データリンク層と物理層です。
コンピューターの情報は、すべて2進数の0と1で表されますが、データリンク層では、単なる0と1の列ではなく、フレーム(パケットとほぼ同じ意味だが、データリンクで使用される用語)として相手の機器に伝えます。
2進数の0と1の変換をするのが物理層になります。
また、実際の通信媒体では電圧の変化や光の点滅、電波の強弱などです。
OSI参照モデルのデータリンク層で関係する、MACアドレス、媒体共有・非共有のネットワーク、スイッチング技術、ループ検出、VLANなどと、具体的な通信手段であるイーサネット、無線LAN、PPPなどのデータリンクについて紹介していきます。
世界中を結ぶインターネットによる通信も、データリンクの集まり(データリンクの集合体)です。
・ツイストペアケーブル
電話通信や、イーサネットなどのデジタル通信の媒体として使われています。
ツイスト・ペア・ケーブル (coocan.jp)
・同軸ケーブル
さまざまなアプリケーションのアナログおよびデジタル信号を送信するために使用します。
テレビとアンテナを繋ぐために使われています。
MaxGain - 超低損失かつ柔軟性に優れた同軸ケーブル|製品情報|アンフェノールジャパン株式会社 -航空宇宙・産業機器用コネクタ- (amphenol.co.jp)
・光ファイバー
光ファイバーケーブル同士を繋ぐときにはコネクタと呼ばれる部品が必要です。
ファイバーケーブルコネクタの構造と種類・それぞれの特徴まとめ | LANケーブルと結束バンドのことなら|パンドウイット (panduit.co.jp)
1-1. データリンクのセグメント
データリンクのセグメントとは、区切られた1つのネットワーク(ブロードキャストが届くネットワークの範囲)のことをいいます。
【OSI参照モデル】データリンク層とは - ITを分かりやすく解説 (medium-company.com)
1-2. ネットワークのトポロジー
通信ネットワーク上の接続形態、構成形態のことをトポロジーといいます。
トポロジーには、バス型、リング型、スター型、メッシュ型があります。
LANのトポロジー<LAN<ネットワーク<Web教材<木暮 (kogures.com)
2. データリンクの技術
2-1. MACアドレス
MACアドレスは、データリンクに接続しているノードの識別やそのノード間の通信を行うために利用されます。
データリンクに接続しているコンピュータ同士は単にLANケーブルを繋げばいいのではなく、そのデータ形式に共通の約束事がないとコンピュータは識別できないのです。
この共通の約束事の1つとしてMACアドレスがあるのです。
イーサネットでは、データリンク同士で通信を行うために、宛先のMACアドレスと送信元のMACアドレスが必要になってきます。
IEEE802.3…IEEEとは米国電気電子技術者協会のことで、LAN関連の規格の標準化に関するIEEE802.3はイーサネットの仕様に関する国際規格を示します。
イーサネットやFDDIでは、IEEE802.3で規格化されたMACアドレスが利用されています。
他にも無線LANやBluetoothなどでも同じ規格のMACアドレスが使われています。
MACアドレスは48ビットの長さを持ち、下記のような構造です。
1ビット目:ユニキャストアドレス(0)/マルチキャストアドレス(1)
2ビット目:ユニバーサルアドレス(0)/ローカルアドレス(1)
3~24ビット:IEEEがベンダごとに重複しないように管理するアドレス
25~48ビット:ベンダが製品ごとに重複しないように管理するアドレス
MACアドレスは、インターネットでル通信できる機器にはすべてMACアドレスが割り当てられています。
また、一般的なネットワークインターフェースカード(NIC)の場合はROMに焼きこまれています。
イーサネットやFDDI、ATM、無線LAN、Bluetoothなどデータリンクの種類が異なる場合でも同じMACアドレスが割り当てられることはありません。
・自分のパソコンのMACアドレスを確認方法
コマンドプロンプトを開きます。
ipconfig /all を入力してエンターキーを押します。
物理アドレスのところをを確認するとMACアドレスが分かります。
2-2. 媒体共有型のネットワーク
通信媒体の使い方として、コンテンション方式とトークンパッシング方式があります。
媒体共有型のネットワークとは、通信機器と通信機器をつなぐ媒体(=ケーブル)を共有するネットワークのことをいいます。
初期のイーサネットやFDDIが当てはまります。
1つの通信路でデータを送受信するため、基本的には半二重通信(一度にできるのは送信/受信どちらか)となります。
・コンテンション方式
コンテンション方式とは、データの送信権を競争で奪い取る方式です。
CSMA方式とも呼ばれていて、各ステーションでデータを送信したら早い者勝ちでデータを送信します。
複数のステーションから同時に送信されたら、データが衝突して壊れてしまいます。
その状態を子リジョンといいます。ネットワーク混雑の影響で性能の低下が激しいです。
※ステーション…データリンクではノードのことをステーションといいます。
イーサネットの一部では、CSMA方式を改良したもので、CSMA/CD方式が採用されています。
データの衝突回避のために、衝突を早期に検出、素早く通信路を解放する制御が加えられています。
●搬送波(データ)が流れていなければ、全てのステーションはデータを送信してもいい
●衝突が発生したか検出し、衝突が発生したらすぐに送信をやめることで通信路を解放する
●送信を取りやめた場合、乱数時間待ってから送信をやり直す。
同軸ケーブルの場合は、送信終了までの電圧が規定範囲内であったら正常にデータ送信できていると判断できます。
・トークンパッシング方式
トークンパッシング方式は、トークンと呼ばれるパケットを巡回させて、このトークンによって送信権を制御します。
トークンを持っているステーションだけがデータを送信できます。
衝突がおきないこと、送信権が平等に回ってくるという特徴があります。
より性能をよくするために、アーリートークンリリース方式やアペンドトークン方式などの複数のトークンを同時に巡回させる技法も登場しました。
トークンパッシング方式
トークンを受け取ったステーションだけが送信できます。(トークン:青色の四角)
Aはトークンを受け取ってはじめてデータを送信できます。
↓
宛先C、送信元Aのデータ(データ:緑色の四角)
自分宛ではないパケットは、そのまま次のステーションに送られます。
↓
自分宛のパケットを受信したステーションCは、受信したことを示すために、フラグを設定し、次のステーションDにパケットを送ります。
↓
パケットは、データを送信したステーションに戻ってから捨てられます。
そしてトークンが次のステーションに送られ、送信権が移ります。
2-3. 媒体非共有型のネットワーク
各通信機器が媒体を共有せずに占有するネットワークです。
ステーションはスイッチと呼ばれる装置に直接接続され、そのスイッチがフレームを転送します。
この方式では、送受信の通信媒体が共有されないため、多くの場合では、全二重通信となります。
ATMなどで採用されています。
イーサネットスイッチなどを用いてネットワークを構築し、コンピュータとスイッチのポートが1対1に接続される場合には全二重通信が可能で、効率のいい通信ができるようになります。
スイッチに高度な機能を持たせることで、仮想的なネットワーク(VLAN)の構築なども可能になります。
全二重通信の場合、基本的には各ステーションは、送信したいタイミングで送信することができます。
スイッチが宛先の情報を調べて、宛先のノードが接続されているポートにだけフレームを転送します。
・半二重通信と全二重通信
半二重通信は、送信している間は受信できず、受信している間は送信できません。
全二重通信は、送信と受信を同時に行うことができます。
2-4. MACアドレスによる転送
レイヤ2スイッチがイーサネットフレームを転送できるようにするために、特別な設定をする必要なく、自動的に転送表が生成されます。
データリンク層での、パケットを受け取った時に、そのパケットの送信元MACアドレスとそのパケットを受け取ったインターフェイスの対を転送表(フォワーディングテーブル)に書き込みます。
MACアドレスはインターフェイスの先にあるので、今後はそのMACアドレスを宛先アドレスとするパケットはそのインターフェイスから送り出せばいいと分かります。
これを自己学習といいます。
MACアドレスは階層性ではないため、転送表のエントリはそのデータリンク内に存在する機器の下図だけ必要になります。
機器の数が多ければ多いほど、転送表も大きくなるので、検索に時間がかかるようになります。
・スイッチの転送方式
スイッチの転送方式には2種類あります。
■ストア&フォワード方式
イーサネットフレームの末尾のFCSをチェックしてから転送を行います。
エラーフレームは転送しない利点があります。
■カットスルー方式
フレームを全部蓄積し終わる前に処理が始まり、送信先のMACアドレスが分かり次第、転送をするため、遅延時間が短いが、エラーフレームを転送する可能性がでてきます。
2-5. ループを検出するための技術
ブリッジでネットワークを接続するときに発生しうるものにループ問題があります。
ブリッジはフレームを隣のリンクにコピーするため、フレームが回り続けてループしている状態になります。
この状態になると、ネットワークをメルトダウンさせてしまいます。
このループを解決する方法として考えられたのがスパニングツリーと呼ばれる方式と、ソースルーティングになります。
これらの機能をもった ブリッジを使うとループのあるネットワークを構成しても問題なく通信できます。
・スパニングツリー
スパニングツリーは、IEEE802.1Dで定義されていて、1〜10秒の感覚でBPDU(Bridge Protocol Data Unit)とよばれるパケットを交換します。
通信に使用するポートと使用しないポートを決定しループを消すようにしています。
ブリッジの機能だけでループを解消できます。
また、障害時はポートを切り替えて迂回路として利用できるようになっています。
・ソースルーティング
IBMによってToken Ringネットワーク用に開発されました。
送信コンピューターがどのブリッジ経由でフレームを流すのか決定し、フレームのRIF(Routing Information Field)に書き込み、その情報を元に配送処理を行います。
これにより、ブリッジによるループがあったとしても、フレームはループせずに目的地にたどり着くことができます。
この仕組みは、送信コンピューターがソースルーティング機能をもっていなければなりません。
2-6. VLAN
ネットワーク管理については、VLAN技術を利用しましょう。
VLAN技術を利用できるブリッジやスイッチで、ネットワークの配線を変えずにネットワークの構成を変えることができます。
また、VLANは異なるVLAN間の通信をすべて遮断するので、余分なパケットが流れず、効率的に運用できます。
スイッチのポートごとにセグメントを分けることで、ブロードキャストのトラフィックが流れる範囲を区切ることができ、ネットワークの負荷の軽減やセキュリティを向上させることができます。
異なるセグメントでの通信は、ルーターの機能が備わっているスイッチ(レイヤ3スイッチ)を利用するか、セグメント間をルーターで結ぶ必要があります。
VLANを異なるスイッチでまたいだセグメントを構築できるようにしたものがIEEE802.1Qで標準化されたタグVLANです。
セグメントごとに一意のVLAN IDを設定し、イーサネットのヘッダにVLANタグを挿入し、フレームを転送するか判断します。
VLANを使うことで、配線の変更なしに、ネットワークセグメントを変更できるので便利です。
3. まとめ
データリンクではどんなケーブルで繋げているのか、またMACアドレスやデータ転送の際にどんな動きをしているのか、イメージすることができました。
ループ問題の解決方法も知ることができたので、ネットワークを構成するときには意識しておきたいと思います。
次回、イーサネット、無線LAN、PPPなどについても学んでいきたいと思います。