学校環境で進む情報化
近年、教育の情報化が進み、各学校において機器の整備や先端技術を活用した教育が広がっています。
電子黒板やタブレットを活用した授業が行われることは珍しい事ではありません。
ICT支援員などの立場で学校現場の環境整備に携わる場合、教室の広さや利用者等に合わせた運用・保守が必要になります。
今回は通常授業で使用する際に用意するべきICT機器や、遠隔授業の際のICT機器、現在行われている先端技術を活用した教育についてまとめました。
1. 学校で整備するべきICT機器
1-1. ①大型掲示装置
電子黒板やプロジェクターなど。学習用コンピュータ、または指導者用のコンピュータと有線、または無線で接続し、大きく映す掲示機能を持つものである必要があります。
画面サイズは、教室の明るさや教室の最後方からの見えやすさを考慮したサイズとします。
また、以下のような機能を有するものが望ましいです。
・掲示機能:コンピュータや実物投影装置と接続して、教科書や教材等を大きく映す機能
・インタラクティブ機能:画面を直接触っての操作、書き込み、保存等を可能とする機能
1-2. ②実物投影装置
上記の大型掲示装置と接続して掲示するためのカメラ機能を有するもの。
主に小学校や特別支援学校の普通教室や特別教室(理科室・図工室等)に設置されていることが望ましいです。
1-3. ③学習者用コンピュータ(児童・生徒用)
各クラスで1日1コマ程度を目安とした学習者用コンピュータの活用が保証されるよう、3クラスに1クラス分程度の配備が望ましいです。
最終的には一人一台環境を目標に配備を進める必要があります。
児童生徒用の学習者用コンピュータは、以下のような機能を有するものが望ましいです。
・ワープロソフトや表計算ソフト、プレゼンテーションソフト等、様々な教科で横断的に活用できる学習用ソフトウェアが安定して動作する機能を有すること。
・授業運営に支障がないように短時間で起動する機能を有すること。
・安定した高速接続が可能な無線LANが利用できる機能を有すること。
・コンテンツの見やすさ、文字の判別のしやすさを踏まえた画面サイズを有すること。
・キーボードの機能を有すること。小学校中学年以上では、ハードウェアキーボードを必須とすることが適当。
・観察等の際に写真撮影ができるよう、カメラ機能を有すること。
・「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を踏まえたセキュリティ対策を講じている事。
1-4. ④指導者用コンピュータ(教員用)
各学校種の授業を担任する教員それぞれに1台分の配備がなされ、以下のような機能を有していることが望ましいです。
基本的な考え方は学習者用コンピュータに準じている必要があります。
・指導者用のデジタル教科書を活用する場合に、安定して動作すること。
1-5. ⑤充電保管庫
各学校において、学習者用コンピュータの充電・保管のために必要な台数が整備されている必要があります。
電源の容量に配慮し、適切な台数を見積ります。
1-6. ⑥ネットワーク
各学校の状況や教室の使用用途に合わせて、有線LANまたは無線LAN環境の整備が必要です。整備の際は、以下に配慮します。
・外部のネットワークへ接続するための通信回線は、大容量データのダウンロードや集中アクセスにおいても通信速度、またはネットワークの通信量が確保されること。
・校内LANは、学級で児童生徒全員が一人一台の学習用コンピュータを使用して調べ学習等のインターネット検索をしても安定的に稼働する環境を確保すること。
・「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を踏まえたセキュリティ対策を講じている事。
1-7. ⑦学習用ツール
ワープロソフトや表計算ソフト、プレゼンテーションソフトなどをはじめとする、各教科等の学習活動に共通で必要なソフトウェアの整備が必要です。
学習者用コンピュータにおいて支障なく稼働するものであることが望ましいです。
1-8. ⑧学習者用サーバ
情報セキュリティの観点からは、教育委員会による一元管理(インターネット回線を使ったクラウドの活用を含む)を行うことが望ましいですが、学校ごとのインターネット接続によるクラウド活用や学校にサーバを設置するなど、状況に合わせた柔軟な対応が必要です。
2. 遠隔授業を行うための整備
教室以外の場所から遠隔で授業を行う場合は、以下のような機器の整備が必要です。
2-1. ①遠隔会議システム
音声と映像などを相手へ伝えるためのシステム。
主にビデオ会議システムとWeb会議システムに大別され、遠隔教育を行う人・受ける人は同じシステムを導入する必要があります。
専用の端末を使用して通信を行うビデオ会議システムの方が音声、映像通信共に高品質で行える場合が多く、操作が簡単という特徴があります。
それに対してWeb会議システムは比較的低コストで導入・運用できる場合が多いです。
2-2. ②マイク
教員や児童生徒の声を集音するためのマイク。
遠隔授業を行うためには、教員や児童生徒の発言を確実に拾えることが最も重要です。
教員や児童生徒が相手に伝わるように大きな声で発言した内容だけでなく、授業の中で呟いた児童生徒の小さな声などもしっかりと伝えられる性能が備わっていることが望ましいです。
学級人数や教室・部屋の大きさに合わせて確実に集音できるように、指向性・無指向性等のマイクの種類や個数を選定することが必要です。
2-3. ③スピーカー
接続先や児童生徒の声を伝えるためのスピーカー。
音質や音量が問題ない場合には、大型掲示装置に内蔵されているスピーカーを利用することも考えられます。
2-4. ④カメラ
教員や児童生徒、黒板やホワイトボードなどに書かれた内容を映すためのカメラです。
カメラが映す対象が授業中に変わる場合には、あらかじめ複数台のカメラを用意したり、画角調整できるカメラを利用したりすることで、遠隔でも分かりやすい授業に繋がります。
3. 先端技術を活用した教育
3-1. AR・VRを活用した教育
ARは現実世界に様々な情報が付加され、リアルタイムで提供されることで、児童生徒が興味を惹かれたものに対してすぐに必要な情報が提供される等、調べ学習に活用されることが想定されます。
VRは通常では経験できないことを疑似体験させることで、言葉や映像を通じた指導よりも現実感を持った経験をすることでより学びを深める事ができます。
3-2. AIを活用したドリル
個々の児童生徒に合わせた効率的な知識・技能の学習が可能になります。
児童生徒の興味や関心をひきやすい事から、学びに向かう姿勢が弱い児童生徒に対して勉強をするためのきっかけ作りとして一定の効果もあると考えられます。
また、出題や採点がAIによって自動化されることによって、教員の学習指導の負担軽減や、これまで丸付け等に充てていた時間を児童生徒への指導に充てる事が可能になります。
3-3. センシング
マイクを含む感知器(=センサ)を用いて、意見交換を行う児童生徒の会話などの情報を計測・数値化し、学びの状況の分析を行うことができます。
発話量や視線などのデータを自動的に収集することにより、共同学習中の児童生徒の学ぶ姿勢や集中力等についてデータに基づいた指導ができるようになります。
また同様に、教員の指導内容について可視化することもできます。
4. まとめ
コロナ禍で遠隔授業の需要が高まったこともあり、教育現場でのICT機器整備や先端技術を用いた教育はここ数年で大きな広がりを見せていますが、機器の持つ特性を最大限発揮できず、授業内でうまく活用できていない例もあるようです。
各機器への理解を深め、どの様な場面で使用するのが適切かを見極める必要があります。
また、各学校の児童生徒数や環境に合わせた環境整備が必要です。