クレジットカード決済とPCI DSS

公開日: 2024/7/8

クレジットカードは、現金の代わりに利用される支払い手段であり、購買した商品やサービスの代金は後日まとめて支払われる仕組みです。

主要なカードブランドにはVISA、MasterCard、American Express、Discover、JCBなどがあります。

1. クレジットカード決済の仕組み


クレジットカード決済は、顧客の商品やサービスの選択から、支払いの承認までの一連のステップで成り立っています。

このプロセスでは、IT技術が不可欠な役割を果たしています。


クレジットカードの情報は、セキュアな通信プロトコルを使用してオンラインで送信され、加盟店の決済システムがトランザクションを処理し、カード発行会社との連携によって承認が行われます。

クレジットカード決済は、基本的に以下のステップで進行します。


1.カード提示
顧客が商品やサービスを選び、クレジットカードを利用して支払いを行う。

2.情報送信
支払い情報(カード番号、有効期限、セキュリティコードなど)が加盟店の決済システムに送信される。

3.承認
決済システムがカード発行会社にトランザクションの承認をリクエストし、カードの有効性や残高を確認する。

4.結果通知
承認が下りれば、結果が加盟店に通知され、購入が確定される。

5.請求
カード発行会社がカード利用者に対して請求書を送り、利用額の支払いが求められる。

2. クレジットカード決済のセキュリティとIT技術


2-1. PCI DSSの役割

顧客データのセキュリティは、クレジットカード決済において最も重要な要素の一つです。

このため、Payment Card Industry Data Security Standard(PCI DSS)が制定され、これに基づくセキュリティ基準がクレジットカード事業者や加盟店に求められています。

PCI DSSはIT技術を駆使して、クレジットカード情報を適切に保護し、不正アクセスから守ることを目的としています。

2-2. PCI DSSの基本要件とIT技術の関連

PCI DSSの基本要件には、IT技術が深く関わっています。

1.基本要件

・カードデータの保護
クレジットカード情報の取り扱いにおいて、データの保管、転送、処理に関する要件。例えば、暗号化の必要性がある。

・システムとネットワークのセキュリティ
ファイアウォールやIDSなどの導入、セキュアなネットワークの構築が求められる。

・アクセスコントロール
システムへのアクセスを制限し、必要最小限のアクセス権を付与。アクセスの監視も重要。

・定期的なモニタリングとテスト
セキュリティの定期的な監視、テスト、脆弱性スキャンの実施。

・インシデント対応計画
インシデントが発生した場合の対応手順を明確にし、適切な対処を迅速に行う計画。

・ポリシーと手順
安全な環境を維持するためのポリシーと手順の確立。セキュリティポリシーの文書化やトレーニングが含まれる。

2-3. 具体例: IT技術とセキュリティの統合

オンライン小売業者がクレジットカード情報を保管する場合、具体的なIT技術の統合が不可欠です。

データの暗号化には先進的な暗号アルゴリズムが利用され、セキュアな通信にはSSL/TLSプロトコルが活用されます。


また、ファイアウォールやIDSはネットワークを監視し、不正アクセスや攻撃から保護します。

アクセス権の制限にはアイデンティティ管理システムが導入され、従業員やシステムへのアクセスが厳密に管理されます。

セキュリティテストや脆弱性スキャンは、常に新たな脅威に対応するために実施され、インシデント対応計画には最新のセキュリティインテリジェンスが組み込まれます。


PCI DSSの遵守は企業にとって信頼性と信用性を構築し、お客様のデータを守るための基本的な要件となっています。

初心者であっても、これらの基本要件を理解し、実践することでセキュリティの向上に寄与できます。

3. クレジットカード決済の安全性向上に欠かせない暗号化技術


3-1. 暗号化技術の基本

暗号化技術は、クレジットカード情報などの機密データを第三者から保護するための不可欠な手段です。

特にクレジットカード決済の場合、情報の傍受や不正アクセスから顧客データを守ることが求められます。

主要な暗号化技術として使用されるのは、TLS/SSLプロトコルとAES(Advanced Encryption Standard)です。

3-2. TLS/SSLプロトコルによる通信の暗号化

1.概要

TLS(Transport Layer Security)およびその前身であるSSL(Secure Sockets Layer)は、通信路の暗号化とデータの完全性を確保するために使用されます。

特にウェブブラウザとサーバー間の通信において、クレジットカード情報などの機密データを保護するのに効果的です。

2.仕組み

・ハンドシェイクプロトコル
クライアントとサーバーが通信を開始する際に、互いに証明書を交換し、安全な通信を確立します。

・暗号スイート
暗号アルゴリズム、鍵の長さ、メッセージ認証コード(MAC)などを指定するパラメータの組み合わせ。セキュリティのレベルは選択された暗号スイートによって決まります。

・データの暗号化
実際のデータの送受信は、事前に交換された鍵を使用して暗号化され、中間者による盗聴や改ざんから保護されます。

3.利点

・プライバシー保護
通信内容が第三者によって傍受されても、暗号化された形で送信されるため、データのプライバシーが確保されます。

・データ完全性の確認
データが改ざんされていないことを確認するため、MACによるデータ完全性の検証が行われます。

3-3. AESによるデータベースおよびファイルの暗号化

1.概要

AESは対称鍵暗号アルゴリズムであり、データベースやファイルなどの保管領域において、情報の安全性を確保するために利用されます。

対称鍵暗号では、同じ鍵をデータの暗号化および復号に使用します。

2.仕組み

・鍵の生成
暗号化および復号に使用される鍵が生成されます。鍵の長さや生成方法はセキュリティ要件によります。

・データのブロック単位の処理
データは固定サイズのブロックに分割され、各ブロックに鍵を適用して暗号化が行われます。

・復号
暗号化されたデータが必要な場合、同じ鍵を使用して逆変換を行い、元のデータを復元します。

3.利点

・高いセキュリティ
高度な暗号化アルゴリズムに基づいているため、外部からの不正アクセスに対して高いセキュリティを提供します。

・効率的な処理
高速な処理が可能であり、大容量のデータも迅速に暗号化および復号できます。


TLS/SSLプロトコルとAESによる暗号化技術は、クレジットカード決済におけるセキュリティの要となります。

通信の暗号化とデータの保管領域のセキュリティ向上により、顧客の機密データが安全に取り扱われ、信頼性の高いクレジットカード決済環境が提供されています。

4. 未来の展望: IT技術との融合


クレジットカード決済は、IT技術の発展とともに進化し、顧客データのセキュリティが一層重要視されています。

PCI DSSの基本要件を遵守し、具体的なIT技術を組み合わせることで、クレジットカード決済のセキュリティが向上します。


今後も技術の進化に対応しつつ、安全かつスムーズなクレジットカード決済が提供されることが期待されます。

5. IT用語解説まとめ


5-1. POSシステム(Point of Sale System)

1.概要

物理店舗での商品やサービスの販売時において、クレジットカード決済などのトランザクションを処理するためのシステム。

5-2. オンライン決済ゲートウェイ

1.概要

ウェブサイトやアプリ上でのクレジットカード決済を仲介し、セキュアな取引環境を提供するプラットフォーム。

5-3. TLS/SSLプロトコル

1.概要

通信路の暗号化とデータの完全性確認を行うためのセキュリティプロトコル。主にウェブブラウザとサーバーの安全な通信を実現する。

2.技術

・ハンドシェイクプロトコル
通信開始時に証明書を交換し、安全な通信を確立するプロトコル。

・暗号スイート
暗号アルゴリズム、鍵の長さ、MACなどを指定するパラメータの組み合わせ。

・データの暗号化
事前に交換された鍵を使用してデータの送受信を暗号化する。

5-4. AES(Advanced Encryption Standard)

1.概要

対称鍵暗号アルゴリズムであり、データベースやファイルなどの情報を安全に暗号化するために使用される。

2.技術

・鍵の生成
暗号化および復号に使用される鍵を生成する。

・データのブロック単位の処理
データを固定サイズのブロックに分割し、各ブロックに対して鍵を適用して暗号化を行う。

・復号
暗号化されたデータを元の形に戻すために、同じ鍵を使用して逆変換を行う。

5-5. トークン化

1.概要

クレジットカード情報などの機密データを元の情報とは異なるトークンに置き換え、セキュリティを向上させる技術。

5-6. 3Dセキュア

1.概要

オンラインでのクレジットカード決済のセキュリティを向上させるための仕組みで、追加の認証レイヤーを提供する。

2.技術

・One-Time Password (OTP)
一時的なパスワードを使用し、本人認証を行う。

・認証アプリ
カード保有者が専用のアプリを使用して追加認証を行う。

5-7. IDS(Intrusion Detection System)

・侵入検知システム (IDS - Intrusion Detection System)
ネットワーク上で異常なアクティビティを検知し、それを通知するシステム。