VMware vSphereについて学ぼう

公開日: 2025/7/21

皆さんはVMware vSphereについてご存じでしょうか。恥ずかしながら私は仮想化を行えるソフトウェアくらいの認識しかありませんでした。今回はVMware vSphereとはなにか、どういったメリット・デメリットがあるのかを調査してまとめてみました。

1. VMwareとは


「ヴイエムウェア」と読みます。
VMwareとは、アメリカのVMware社が開発する仮想化ソフトウェアの総称です。1998年にVMware社は創立されました。
米国本社の企業名は「VMware, Inc.」、日本法人の企業名は「ヴイエムウェア株式会社 (VMware K.K.) 」です。製品名は同社の名を冠した「VMware vSphere」や「VMware NSX」、運用管理系製品の場合「VMware vRealize (製品名)」などがあります。
社名の表記について、先頭の VM が大文字、それに続く ware が小文字となります。「VMware」や「VMware」といった表記は誤りです。ただし会社ロゴについては全て小文字での表記となります。
VMware社ではサーバ仮想環境の構築だけでなく、デスクトップ仮想化、ネットワーク仮想化、ストレージ仮想化といった、仮想環境構築のための製品が販売されています。
小規模企業向けの簡易な構築から、大規模企業へ提供できるレベルの高い仮想化ソリューションまでを幅広く提供し、仮想化といえば代表的なソフトウェアです。VMwareは、堅ろうなセキュリティで守られ、許可されていないソフトウェアをインストールすることはできません。各環境の独立性はしっかり確保されるのはもちろん、高度な監視ツールも提供されており、安心・安全な仮想環境を提供しています。
VMwareの代表的な製品に、「VMware vSphere」があります。企業の基幹系システムなど重要なソフトウェアの稼働にも利用され、柔軟な拡張性や便利な機能を備えています。
今回はそのVMware vSphereについてご紹介します。

2. VMware vSphereと機能


「ヴイエムウェア ヴイスフィア」と読みます。
歴史としては2009年4月21日にリリースされました。
現時点(2024年4月30日)の安定版リリースは8.0となっています。
ソフトウェアによる仮想化は、ホスト型・ハイパーバイザー型・コンテナ型といった種類がありますが、VMware vSphereはハイパーバイザー型になります。
※ハイパーバイザー型によるメリット・デメリットは記載していますが、ホスト型・コンテナ型については本記事では割愛しております。

3. VMware vSphereの製品構成


vSphere は、物理サーバー上にハイパーバイザー型の仮想化環境を構築する VMware vSphere ESXiや、構築した仮想化環境を管理する VMware vCenter Serverなどを含む仮想化ソフトウェア・スイートの総称です。vSphere を使用することで、中小からエンタープライズ・クラスまでさまざまな規模の仮想化プラットフォームを構築できます。

4. VMware vSphereの主な機能


1.システム障害時のダウンタイムを最小化

障害が発生しシステムダウンした仮想マシンを、別の物理サーバー(ホスト)上で自動的に再起動します。自動復旧が可能なため、緊急対応から開放されます。専用のハードウェアおよびソフトウェアは必要ありません。

2.サーバの計画的なメンテナンスが常時可能

システムが稼働した状態のまま、仮想マシンを別の物理サーバー(ホスト)に移動させ、オンラインのままリソースを再配置することが可能です。

3.仮想デスクトップのパフォーマンスを最大化

システムを稼働状態のまま、仮想マシンを別の物理サーバー(ホスト)に移動させることが可能になります。また、ホスト部のリソース利用状況をモニタリングし、自動的にロードバランシングを行います。

4.サービスレベルを保証しつつ、消費電力を最小限に抑制

仮想サーバーの稼働率が低いときには、DPM( Distributed Power Management)により仮想マシンを片寄せします。また、次の手順で常時節電を実行し、仮想マシンの中断 & 停止を回避します。

1.リソース稼働率が減少すると少数の ESXi 上に仮想マシンが移動
2.仮想マシンが不在となった ESXi はスタンバイモードに移行
3.ワークロード要求が増えたタイミングで ESXi がオンラインで復帰し、仮想マシンが負荷分散

5.ホストとクラスタのライフサイクル管理

vSphere Lifecycle Managerは vSphere 7.0 以降で使用可能な、vSphere 環境のバージョンやパッチの適用状態の管理や修正作業などの仮想化環境のライフサイクルを管理します。vLCM は、vShere 6.0 までの vSphere Update Manager (VUM) の機能に加えて、「イメージ」による管理を可能にします。

6.分散するvSphere環境の一元管理

VMware Cloud (VMC) で使用される一元的なコンソールである「Cloud Console」を使用することで、複数のクラウドやオンプレミス環境に分散して運用している vSphere インベントリ全体を可視化できます。(Subscription ライセンス使用時のみ)

5. VMwareのメリットとは


1.コスト削減

仮想環境を実装すると、これまで複数のハードウェアが必要だったものが、一つに集約できます。そのため、機器を購入するコストが削減できるメリットがあります。
仮に高スペックの高価なサーバを購入したとしても、複数台のサーバをそろえる方が高くなる可能性もあります。サーバの台数が多ければ、UPS(無停電電源装置)やネットワーク機器が多く必要になるかもしれません。ハードウェアが増えれば、ラックの増設や、より広い置き場所が求められます。
機器を集約できれば、電力などのランニングコストを削減できるメリットもあります。また、サーバを管理するための人件費や、ハードウェア保守費用の低下も見込めます。

2.システムの一元管理による業務効率化

ハード機器が多いと、全てをメンテナンスしたり、管理したりするのは大変になります。また、一般的にハード機器の保守サポート期限は5年です。購入した時期がそれぞれ異なると、どれがいつサポート期限切れになるのか管理するのも煩雑になります。
さらに、アプリケーションのバージョンアップに合わせてOSの更改が必要になれば、データ移行にも時間もかかり、計画的なスケジュールが必要です。仮想化により機器を少なくすることで、このような手間も最小限に削減できます。

3.柔軟な拡張が可能

物理的なサーバにメモリやディスクを追加する場合、機械を分解したり、稼働を停止して工事を計画しなければなりません。しかし、仮想環境上でメモリを割り当てることで、物理的な増設工事の必要はなくなり、素早く柔軟な拡張が可能です。
スペックを拡張するためには、一度仮想環境を停止し、パラメーターを設定する必要がありますが、物理サーバを拡張するよりも、はるかに運用停止時間を短くできます。
例えば、繁忙期にスペックを上げて、稼働が落ち着いた時期にパラメーターを戻すなどの運用をすれば、効率的にリソースを活用できます。柔軟に拡張できる点は、仮想環境構築のメリットの一つです。

4.耐障害性

仮想環境は一つのファイルとして、バックアップを取得できます。仮に仮想環境が構築された物理サーバが故障した場合、バックアップファイルを別のハードウェアに移行すれば、運用の継続が可能です。
物理サーバでバックアップを取得しておくという方法もありますが、その場合、ハードウェアに移行する際、ハード側の制約を受けやすいという問題があります。仮想環境でバックアップをとることで、ハードウェアは何の変化もないため、アプリケーションの設定を変更する必要はなく、スムーズに移行できます。

5.ハイパーバイザー型であること

VMware vSphereのメリットというよりかはハイパーバイザー型のメリットになりますが、ホストOSが不要なため、ハードウェアを直接制御でき、処理速度の低下を最小限に抑えられます。また、複数の仮想マシンをリソースの無駄なく効率的に動かせるのも強みといえるでしょう。アプリケーションサーバー、Webサーバー、DBサーバーをセットで同じ物理環境に載せ、1つの物理サーバーでシステムを完結させることも可能です。

6. VMwareのデメリットとは


1.物理環境よりも性能が劣る

仮想環境は仮想化ソフトウェアによって作られます。物理的な環境に比べて仮想化の処理をはさむことで、割り振ったリソースよりも性能が劣る場合があります。
また、物理的なメモリやディスク、CPU機能を分割して各仮想環境に割り振っているので、十分なリソースを確保できずにパフォーマンスが発揮できないケースもあると考えられます。実際は、物理リソースを共有して使用していることもあり、仮想環境に設定したスペックよりも性能が落ちてしまいます。

2.運用管理

物理的なサーバなどに比べると、仮想化の概念や知識が必要になります。サーバを運用・管理するためには、仮想技術を修得した人材の確保が求められます。
運用方法も少し複雑になってきます。例えば、一つの仮想環境に複数のアプリケーションをインストールし、運用していたとします。とあるアプリケーションについてバックアップ処理を開始した場合、他のアプリケーションの処理に影響を及ぼす可能性も考慮しなければなりません。
このように、運用計画を綿密に考えなければならない場合があります。仮想化することで、かえって運用管理が煩雑になってしまうケースがある恐れがあります。

3.セキュリティ管理

セキュリティ管理も、通常のサーバに比べると、特別な対策が求められます。これまで行ってきたOSやアプリケーションによるセキュリティ対策にプラスして、仮想環境特有のセキュリティ管理が必要になります。
また、仮想環境は、あらゆるサーバが相乗りすることもあり、どのような手段でどこを守るのかを考えなければなりません。ウィルスに感染したときの感染経路の遮断や、各仮想環境に対するセキュリティ対策など、計画的に考慮する必要があります。

4.ハイパーバイザー型であること

VMware vSphereのデメリットというよりかはハイパーバイザー型のデメリットになりますが、ハイパーバイザーが動作可能な専用の物理サーバーを用意しなければなりません。
システムの質や数によって、物理サーバーに必要なスペックは変わってくるため、最初に物理サーバーを選ぶときは特に慎重になる必要があります。

7. まとめ

VMware vSphereについてどういったものなのか、メリット・デメリットはなにかを学ぶことができました。
この記事を読んだ方が少しでも理解していただけたら幸いです。