負荷テストとインフラの基礎知識 〜現場で活きる実践的ノウハウ〜

公開日: 2025/8/13

今回は「負荷テスト」について、実務ベースで押さえておきたいポイントをブログ形式でご紹介します。

最近ではWebアプリケーションの多様化とともに、アクセス集中や大量データ処理に耐えうるシステム構築が求められています。その中でも、システムの健全性を担保するための“負荷テスト”は非常に重要な工程のひとつです。

「負荷テストって聞いたことあるけど、実際どんなことをするの?」「インフラの知識がないとできないの?」という方に向けて、実践に即した情報をまとめてみました。

1. 負荷テストとは?


負荷テストとは、システムに意図的に負荷(トラフィックやアクセス数など)をかけて、そのパフォーマンスや挙動を確認するテストのことです。主な目的は以下の2点です。

 ・負荷がかかることで、どのようにシステムの性能が変化するのかを把握する

 ・想定を超えた負荷がかかったとき、重大な障害やシステム停止に繋がらないかを確認する


たとえば、ECサイトでセールを開催した場合、一時的にアクセスが爆発的に増加することがあります。この時、ページが遅くなったり、最悪落ちてしまったら、ユーザーの信頼を失いかねません。そういった“万が一”を未然に防ぐために、負荷テストは欠かせない存在です。

2. 性能テストとの違い


「負荷テスト」と「性能テスト」は似たように聞こえますが、目的が少し異なります。

 ・性能テスト:通常時の条件で、システムの性能に問題がないかを検証する。

 ・負荷テスト:通常時を超える高負荷の状態で、システムがどこまで耐えられるか、問題が発生しないかを確認する。


つまり、負荷テストは“極限状態のテスト”とも言えます。

3. 負荷テストの基本的な進め方


実際に負荷テストを行う場合、以下のようなステップで進めるのが一般的です。

1.キックオフミーティング
  テストの目的やゴールを明確にし、関係者間で認識を合わせます。

2.テスト観点の洗い出し
  どの部分に負荷をかけるか、どのような条件で行うかを決めます。

3.テスト対象の特定
  Webアプリケーション全体なのか、APIの一部なのか、具体的な対象を明確にします。

4.負荷の試算
  ピーク時に想定されるトラフィック量を元に、負荷のシナリオを組み立てます。

5.ツールの選定
  JMeterやGatling、LoadRunnerなど、目的に合った負荷テストツールを選びます。

6.試験実施とモニタリング
  実際に負荷をかけながら、応答時間、CPU・メモリ使用率、スループットなどを測定します。

7.結果分析とレポート作成
  パフォーマンスのボトルネックや問題箇所を特定し、ドキュメント化して共有します。

4. 負荷テストに欠かせないツール「JMeter」


負荷テストの現場でよく使われているのが、Apache JMeter(ジェイミーター)です。
JMeterはオープンソースで、HTTPリクエストやWeb APIへのアクセスなどをシナリオとして設定し、仮想的に多数のユーザーを発生させることができます。以下のような特徴があります。

 ・Javaベースで拡張性が高い

 ・Webアプリケーション、FTP、データベース、SOAPなど多種多様なプロトコルに対応

 ・グラフ表示など、結果分析の機能が豊富

 ・オープンソースなので無料


ただし注意点もあります。英語のドキュメントが多く、設定にはある程度のインフラやAPIの知識が求められます。初心者がいきなり使いこなすのはややハードルが高いかもしれません。

5. 負荷テストに求められるインフラの理解


負荷テストを正しく行うには、システム全体の構造、特にインフラに対する理解が必要不可欠です。

インフラとは?

システムを支える基盤であり、以下のような構成要素があります。

 ・サーバー:アプリケーションが動作するコンピュータ
 ・ネットワーク:各サーバーやクライアントをつなぐ通路
 ・データベース(DB):情報を保存する仕組み
 ・ミドルウェア:OSとアプリケーションの仲介役(例:WebサーバーやAPIゲートウェイ)

インフラの形態

 ・オンプレミス:物理的なサーバーを自社で管理
 ・クラウド(IaaS / PaaS / SaaS):必要に応じて外部サービスを活用

負荷がDBに集中する場合、インデックスの見直しやキャッシュの導入が有効です。Webサーバーが原因であれば、リバースプロキシやロードバランサーの導入も検討されます。

6. 開発手法と負荷テストの関係性


開発手法によって、負荷テストの実施タイミングや重要度が異なります。

・ウォーターフォール型

要件定義から開発・テスト・リリースまでを順に進める方法です。この場合、リリース直前に負荷テストを実施するケースが多いです。

・アジャイル型

短いサイクルで実装とテストを繰り返す手法です。継続的に負荷テストを行いながら、段階的にパフォーマンス改善をしていくスタイルが向いています。
アジャイルでは特に「スクラム」や「エクストリームプログラミング(XP)」が有名で、開発チームが密に連携しながら柔軟な対応が求められます。

7. エンジニアに求められる役割とスキル


負荷テストを担当する際、下記のようなエンジニアスキルや役割に触れることも多くあります。

 ・フロントエンドエンジニア:ユーザーが直接触れるUI部分を設計・実装
 ・バックエンドエンジニア:APIやDBなどサーバーサイドのロジックを構築
 ・インフラエンジニア:システム全体の安定稼働を担う
 ・SRE(Site Reliability Engineer):運用と開発の橋渡し的存在。自動化や監視の設計が得意


さらに、プロジェクトやチームを円滑に進めるためのテックリードやプロジェクトマネージャーなどの役割も重要です。

8. まとめ 〜負荷テストは経験とセンスがものを言う〜


負荷テストは一朝一夕で身につくものではありません。負荷のかけ方、対象の選定、結果の分析まで、すべてにおいて“実践的なセンス”が求められます。

とはいえ、それだけに非常に価値の高いスキルでもあります。実際、負荷テストを得意とするエンジニアの案件単価は非常に高く、短期間で100万円以上の案件も珍しくありません。
「なんとなく使える」レベルではなく、「負荷がかかるとどこがボトルネックになるのか」を感覚的に予測できるレベルを目指すことが、プロフェッショナルへの第一歩です。

まずは基本的なインフラ知識をおさえ、実際のテストツールに触れてみるところから始めてみてはいかがでしょうか?