組み込み開発とOSの関係は?汎用OSとの違いから将来性まで
組み込み開発とは、家電や自動車、ロボットなどに搭載される制御ソフトウェアを開発することです。
組み込み開発には、OS(オペレーティングシステム)という重要なソフトウェアが必要です。
OSとは、機器の基本的な動作や管理を行うソフトウェアのことで、組み込み開発では、組み込みOSと呼ばれる特殊なOSを使用します。
この記事では、OSとは何か、組み込みOSとは何か?組み込みOSの種類から、その需要と将来性まで解説していきます。
1. OSとは
OSとは、オペレーティングシステムの略で、様々な機器において搭載されており、システム全体の管理や制御を行っている重要なソフトウェアの一種です。
OSは、CPUやメモリ、ディスクなどのハードウェアの性能や容量を管理した上で、アプリケーションプログラムへと入力内容を伝達する役割を持っています。
OSは、機器の種類や用途によって、汎用OSと組み込みOSの2種類に分類されます。
1-1. 汎用OSとは
パソコンやサーバーなどに用いられる汎用OSです。
汎用OSは、多種多様な複数のアプリケーションプログラムを要求された操作の順番通りにかつ、並列で実行する制御を行います。
代表的な汎用OSには、MicrosoftのWindowsやAppleのMacOS、Linuxなどがあります。
1-2. 組み込みOSとは
家電や自動車、ロボットなどに用いられる組み込みOSです。
組み込みOSは、特定の機能を持ったアプリケーションプログラムを決められた優先順位通りに実行する制御を行います。
組み込みOSは、リアルタイム性や信頼性などが求められます。
2. 組み込みOSとは
2-1. 組み込みOSの特徴
組み込みOSとは、家電製品や医療機器、車載向け電子機器などある特定の機能を果たすための組み込みシステムに搭載されるOSのことです。
以下に、組み込みOSの特徴をいくつか紹介します。
1.ハードウェアに直接アクセスできる
組み込みOSは、ポインタやビット演算などの機能を使って、ハードウェアに直接アクセスできます。
これにより、ハードウェアの制御や最適化が容易になります。
2.ファイルサイズが小さい
組み込みOSは、コンパイラによって機械語に変換されるため、ファイルサイズが小さくなります。
これにより、リソースの少ない組み込み機器にも適しています。
3.移植性が高い
組み込みOSは、様々なプラットフォームやOSに対応しています。
これにより、異なるハードウェアや環境にも移植しやすくなります。
4.リアルタイム性や信頼性が重要
組み込みOSは、リアルタイム性や信頼性が重要な要素となります。
リアルタイム性とは、外部からの入力やイベントに対して、一定の時間内に正確に応答することを指します。
信頼性とは、障害やエラーに対して、正常に動作することを指します。
組み込みOSは、これらの要素を満たすために、厳密な設計やテストを行うことが重視されます。
2-2. 汎用OSとの違い
また、組み込みOSと汎用OSとの違いは、以下のようなものがあります。
1.ROMに焼いて利用する
組み込みOSは、アプリケーションとともにROM(読み取り専用メモリ)に焼いて利用されることが多いです。
ROMに焼いたOSやアプリケーションは、電源を切っても消えないため、起動時に読み込む必要がなく、起動時間を短縮できます。
また、ROMに焼いたOSやアプリケーションは、不正な書き換えや改ざんを防ぐことができます。
一方、汎用OSは、一般的にHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)などの書き込み可能なメモリにインストールされて利用されます。
書き込み可能なメモリにインストールされたOSやアプリケーションは、電源を切ると消えるため、起動時に読み込みが必要です。これにより、起動時間が長くなります。
また、書き込み可能なメモリにインストールされたOSやアプリケーションは、不正な書き換えや改ざんのリスクがあります。
2.リソースの制約に応じてカスタマイズできる
組み込みOSは、様々なハードウェアや環境に対応するために、必要な機能やモジュールだけを選択して組み込むことができます。
これにより、メモリやCPUの使用量を最小限に抑えることができます。
また、組み込みOSは、特定のアプリケーションに最適化するために、パラメータやアルゴリズムを調整することができ、パフォーマンスや効率を向上させることができます。
一方、汎用OSは、様々なアプリケーションに対応するために、多くの機能やモジュールが備わっている反面、メモリやCPUの使用量が大きくなります。
2-3. 組み込みOSの種類
組み込みOSの種類について、代表的なものを紹介します。
1.RTOS(リアルタイムオペレーティングシステム)
RTOSとは、リアルタイム性を重視した組み込みOSで、外部からの入力やイベントに対して、一定の時間内に正確に応答することを保証します。
RTOSは、自動車や航空機、医療機器など、人命や安全に関わるシステムに用いられています。
2.Linux
Linuxは、オープンソースの汎用OSです。
Linuxは、カーネルと呼ばれるOSの中核部分と、ユーザーインターフェースやアプリケーションなどの周辺部分に分かれており、カーネルや周辺部分をカスタマイズすることで、組み込みOSとして利用できます。
Linuxは、AndroidやiOSといったスマートフォンやタブレットから、スマートテレビまで様々な組み込み機器に用いられています。
3.Windows Embedded
Windows Embeddedとは、Microsoftが開発した組み込みOSで、Windowsの機能やインターフェースを組み込み機器に提供します。
Windows Embeddedは、ATMやPOS、デジタルサイネージなど、様々な組み込み機器に用いられています。
3. 組み込みOSの需要と将来性
組み込みシステムは、家電や自動車、ロボットなど、様々な製品やサービスに搭載されており、社会のインフラや産業の基盤となるものです。
近年では、AIやIoTなどの最新の技術にも応用されており、さらなる発展が期待されています。
組み込みOSは、組み込みシステムに必要不可欠なソフトウェアであり、組み込みシステムの普及とともにその需要は高まっているといえるでしょう。
また、組み込みOSの将来性は、AIの登場によって大きく位置付けが変わりました。
お掃除ロボット、自動運転技術などが代表される通り、組み込みOSは、AIやIoTの技術と連携することで、より高度な処理や分析を行うことが可能となっています。
特にAIやIoTの分野では、クラウド上でアプリケーションを実行したり、ソフトウェアの開発を前提とするクラウドネイティブという考え方があります。
それにより、言語は組み込みOSの機能や処理がクラウド上に移行されることがあるかもしれません。
4. まとめ
組み込み開発は、ハードウェアとソフトウェアの両方に関わる、リアルタイム性や信頼性が重要な技術です。
組み込み開発には、C言語やアセンブラなどの低水準の言語がよく使われており、幅広い技術力と知識を身につけることができます。
学習コストは低くはありませんが、様々な製品やサービスで活用されており、需要が高く安定しているため、将来性のある分野といえるでしょう。