【初心者向け】テスト自動化について

公開日: 2025/6/13

テスト自動化とは、人の手によって行われるソフトウェアテストの全体あるいは一部を自動化することを意味します。そもそもソフトウェアテストは、不具合を見つけることが目的です。そのため、テストを繰り返し行うことも増えています。テスト自動化によって、テストにかかる人的負担を減らし、将来的なコストの削減が期待できます。

1. テスト自動化が求められている背景


なぜテスト自動化が注目されているというと
以下の3点と言われています。

・ソフトウェア開発を取り巻くビジネス環境の変化
・開発手法の変化
・求められる新規開発と品質保証の両立

1.ソフトウェア開発を取り巻くビジネス環境の変化

かつては適切に、計画通りにソフトウェア開発をすることが望ましいとされていたため、1年以上の長い時間をかけて開発が行われていました。しかし近年は市場の移り変わりが激しくなっており、開発中に市場のニーズが変わってしまうことも多くなりました。そのため現在はハイスピードで効率の良いソフトウェア開発が求められるようになっています。

2.開発手法の変化

各開発フェーズにしっかりと時間をかけ段階的に進めることで、当初の計画・要件に忠実なソフトウェア開発を実現することを目的とした開発手法がウォータフォール型から、仕様変更や設計変更を前提に厳密な仕様を決めないまま、小単位での実装とテスト実行を繰り返す手法のアジャイル型開発が主流となってきています。

3.求められる新規開発と品質保証の両立

高速で効率的な開発が重視される昨今において、新機能や新サービスを速いペースで生み出し続けるには、システム全体を素早く成長させつつ過去にリリースした機能の品質確保が重要になります。短期間、低コスト、高品質なソフトウェア開発をすることが求められるようになりました。

参考:https://service.shiftinc.jp/column/4634/

2. テスト自動化のメリット


テスト自動化を行うことで、さまざまなメリットがあります。

1.不具合の早期発見

テストを自動化することによって、より短い時間で不具合を発見することができます。

テストを何度も繰り返して実行できるような自動テスト環境を構築することによって、毎週~毎日単位でのテスト実行が可能になり、結果的に不具合を早期発見できるようになります。

さらに、不具合を早期に発見できることで、業務上のムダを取り除くことにもつながり、時間を短縮して開発にかかる時間を効率化できます。

2.コストを抑えながら品質を高められる

手動テストで品質保証を行うことは、莫大な労力とコストがかかってしまいます。そのため、品質保証の範囲をスリム化する手法がよく用いられます。しかし、テストが不十分な箇所が原因でシステム障害が発生するケースも珍しくありません。

テスト自動化を採り入れることで、ソフトウェア全体の品質向上に向けた取り組みを、コストを抑えながら実施できるようになります。

3.人的リソースが不足していてもテストできる

人の手による手動テストの場合、何らかの事象によって人的リソースが不足してしまうと、テストを実行できなくなる可能性があります。それに対して、自動テストの場合はシステムがコード通りに自動でテストを行うため、人的リソースが不足した状況でもテストを行うことができます。

さらに、手動テストでは難しかった大規模な性能テストや、大量のデータを比較するテストなどを行うことも可能です。

4.テストを高速で実施できる

テストを自動化することによって、人の手によるテストと比べて高速かつ正確なテストを実施することができるようになります。ただし、テストの実行速度はテスト内容や使用するツールによって変化します。

5.ヒューマンエラーを排除できる

人の手によるテストでは、ヒューマンエラーが発生する可能性があります。一方、テスト自動化を導入した場合はシステムが正誤を判断するようになるため、ヒューマンエラーを排除することができます。

6.営業時間外でもテストできる

手動テストの場合は、テストエンジニアが勤務している営業時間内にテストを実行します。ときにはテストの際に関連する機能の開発を止めることや、そのための調整を行うこともあります。

一方、自動テストの場合は営業時間外でもテストを行えるメリットがあります。就業後や休業日、深夜帯といった時間帯であってもテストの実行が可能です。関連する機能とバッティングを避けることや開発の生産性を損なわないこともメリットと言えます。

3. テスト自動化のデメリット


テストの自動化には様々なメリットがありますが、デメリットも存在します。

1.初期段階にかかるコストが大きい

テスト自動化を行うためには、テストコードを作成するためのツールを使用するために学習が必要になります。このほかにもさまざまな初期段階のコストが発生します。

テストを行う対象がどれくらいの頻度で実行されるか、自動テストにどういう効果を求めるかなど、コストパフォーマンスを含めた総合的な判断が必要です。

2.テスト自動化の保守運用が必要

自動テストは導入してすぐに結果が出るものではありません。長期にわたって運用を続けることで投資対効果が得られるものです。長期にわたって運用するためには、自動化したテストの保守が必要となり、そのためのリソースも必要です。また、自動テストがアップデートされる際はその都度テストコードの修正が発生するほか、機能が追加されたときもその機能を実行できるようなテストコードの修正が必要です。

3.テスト自動化が適していない場合がある

先ほど初期段階にかかるコストが大きいというデメリットを紹介したように、テストの自動化にはさまざまなコストがかかるため、自動化が適していないケースもあります。

例えば、繰り返し実行しないテストは自動テストには適しておらず、手動テストの方が効率的であるといえます。また、テスト対象のソフトウェアが自動テストを想定した設計になっていないと、テスト自動化が上手く実行されない可能性もあります。

4.コード通りのテストしか行えない

自動テストの場合、事前に設計したテストコード通りのテストしか行えません。

仮にテスト画面のレイアウトが崩れていたり、仕様とは違う項目が表示されていたりしても、自動テストの確認対象ではない場合は問題を検出できません。テストコードに書かれていなければ、人の目には明らかな不具合に見えるものも検出できません。事前に起こりうる問題を予測して、自動テストで確認できるようにテストコードを書く必要があります。

4. テスト自動化導入の流れ


テスト自動化を導入するには、次の3つのステップを踏む必要があります。

1.目的を設定

テスト自動化を導入することで、ありとあらゆる面でメリットが得られると思いがちですが、実際にはそのようなことはありません。テスト自動化の成功の鍵となるのが、導入する前に自動化の目的について考え、明確に設定することにあります。最初にコストの削減や時間短縮、連続実行や定期実行といった目的を優先順位をつけながら決めて、それらの目的が達成できるかどうかを検討します。

コスト削減を目的にした場合は、初期費用や保守運用の費用を考慮しながら、コストパフォーマンスが得られるかどうかを検討します。自動化をすることで節約できる時間などを導き出しながら、同じテストを実行してどのポイントで損益分岐点に達するかを算出し、判断します。

2.対象や範囲を設定

自動テストが適していない場合もあることから、対象や範囲を定めておくことが必要です。自動化の目的を視野に入れながら自動化の対象や範囲を絞り込みます。

コスト削減を目的にした場合は、テストの手順が確立されていて毎回必ず実行されるテストを自動化の対象とするなどして、コスト削減が見込める部分にフォーカスして絞り込みを行います。

3.テスト自動化ツールの選定

自動化の目的と自動化の対象や範囲を決めた後は、実装するツールを決定します。ツールの選定は、開発目的や対象に適用できることはもちろん、継続して運用することにも着目します。実装するツールのメンテナンスコストやランニングコストも考慮します。

5. 最後に

テスト自動化を推進することで、ソフトウェアの品質向上やテスト工数の削減が期待できます。
一方で、自動化にもメリット・デメリットがあり、ソフトウェアテスト全体を効率的に進める上では、手動テストとの補完関係が重要です。